キムさんは銀座コクリコ美容外科おなじみの患者様です。

キムさんは半年ほど前に眉間のしわの治療を受けましたが、そこはまだ気にならないということで、今回は最近奥様に指摘された目尻のしわの治療のため来院されました。

目尻のしわは、日本語でもおなじみの俗称である‘からすの足跡’という表現がそのまま英語でも使われておりcrow’s feetと言います。
これは、眼輪筋という目の周りを取り巻いて存在する表情筋が収縮することが主な原因です。
その人がそれまでの人生にたくさん笑ってきた証でもあり、人相学的にも悪いわけではありません。
発音はクロウ、でも苦労ならぬ笑いが残した足跡に苦労しているというわけです。
もちろん、悪いしわではありませんので、過剰に抑える必要はありません。

問題は、このしわが笑っていない時にも常に刻まれて戻らないため、他人には年老いた印象を与えてしまうということです。
実際、子供がにっこり笑っても、そのしわはすぐに元に戻りますよね。

年齢を重ねるにしたがって、皮膚の代謝亢進が遅くなり、水分含有量は減り、何よりも皮膚のクッションであるコラーゲン線維の再生が滞ると、肌は腰がぬけたようにハリを失ってゆきます。皮下にある脂肪層は痩せ、かつ重力によって下方へと移動します。これら加齢による変化が伏線にあるからこそ、同じく笑った後のしわの戻りも大人と子供では違うわけです。

しかし、医学の進歩はありがたいもので、からすの足跡はボトックスで軽減させることができます。

からくりは、ボトックスが眼輪筋の一部に働き、筋肉の収縮を抑えてくれることによります。スキンケアやレーザー、あるいはヒアルロン酸をはじめとするフィラーもそれなりに役には立ちますが、あくまで脇役みたいな感じでしょうか。
この場合は表情じわが一番の原因ですから、表情を抑えるボトックス注射が一番効果的です。

では、写真をご覧ください。まずは、おすまし顔です。目元に常に刻まれている笑いじわが存在します。

次に軽く笑っていただきます。すると、洋服のギャザーのようにたくさんのしわが出現します。
この笑う表情をキムさんが一日のうちに何度も作ることで、だんだん皮膚が折り紙の折り目のように凹んでいき、凹みが戻りにくくなっていきます。

ボトックス注射は終わった直後には効果がほとんど分かりません。
1~2日後くらいから徐々に効きはじめ、概ね5日後までには一通りの効果が確認できるようになります。
筋肉は神経からの伝達物質により収縮しますが、ボトックスはこの伝達物質の放出を邪魔することで筋肉の機能を低下させます。
ただ、これは、通常、一時的で可逆的な変化ですので、心配は要りません。

さて、注射から1週間後のキムさんです。どのような変化があったでしょうか?

まず、普通にしている時の表情です。分かりにくいとは思いますが、目尻にいつも刻まれていたしわが軽減されています。
では、軽く笑っていただきます。すると、笑っても目元に過剰に寄っていたしわは改善されています。

Before→After